NBCニュースの報道によると、クラウド・ファンディング・プラットフォームを通じて集められたボストン・マラソン爆破テロの被害者に対する支援額が、200万ドルを超えたとのことです。わずか1週間あまりの間に日本円で2億円近い資金が集められたことは、クラウド・ファンディングのパワーを実感できるエピソードではあるのですが、NBCニュースは、クラウド・ファンディングの危うさも同時に報道していて色々考えさせられます。
まずは、詐欺の危険性。クラウド・ファンディング・プラットフォームは、「自称」爆破テロ被害者がプラットフォームのキャンペーン・サイトにアカウントを開設し、そこを通じて寄付を募ります。プラットフォームは最低限のチェックはしますが、いちいち本当に被害者かどうかはチェックしませんし、現実問題として出来ません。さらに言えば、プラットフォームは、募金額の5%から7%を管理費として徴収します。プラットフォームにとっては、これが貴重な収入源となるわけですから、当然、アカウントも寄附も多ければ多いほど良いわけで、チェックのモチベーションは下がります。
更に深刻な問題は、クラウド・ファンディングは、ボストン爆破テロのように分かりやすく、かつメディアで大々的に報道されるものについての寄附集めでは威力を発揮しますが、より構造的な社会問題への資金集めが難しい点です。例えば、YouCaringというプラットフォームは、癌や難病患者がアカウントを作って寄付を募ります。基本的には、社会保険でカバーされない治療費を求めるものです。それ自体は、もちろん良いのですが、難病患者について言えば、介護の問題や失業の問題など、様々な問題が発生します。こうした問題に取り組んでいるNPOに寄附金が向かわず、個人の社会保険料の差額に寄附金が向かうことが、はたして米国の寄附文化全体にとって良いことなのかどうか、改めて考えるべきだとNBCは報道しています。
日本でもクラウド・ファンディングが発展しつつありますが、今回のNBCの報道は、一度立ち止まってクラウド・ファンディングの功罪を色々と考える機会を与えてくれる良い記事でした。
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