8月30日付で主要メディアが、米国マクドナルド労働者のストライキについて報じています。マクドナルドやウォルマートに代表される低賃金労働状況の改善を求める動きは、今後、さらに大きくなっていくでしょう。
これに関連し、アメリカの「生活賃金(Living Wage)」運動についてご紹介しておきます。アメリカにも、「最低賃金」制度があり、連邦政府の法によって規制されています。しかし、産業界の抵抗のため、「最低賃金」はこの数十年間のインフレ率をほとんど反映しておらず、現在は、最低賃金では生活が出来ない状況になっています。そこで、州や市、郡など地方自治体レベルで、この状況を改善するために、最低限生活できるための賃金を「生活賃金」として法制化したり、あるいは行政機関にこれを導入させたりしようして90年代に開始したのが「生活賃金」運動です。米国では、サン・フランシスコ市、サンタフェ市、ワシントンDCなど140の地方自治体で条例が可決されており、また100のキャンペーンが現在進行中です。
この運動をサポートするため、MITは「生活賃金計算機(Living Wage Calculator)」を開発し、オンライン上で公開しています。これは、連邦政府が公開している様々な生活関係統計データを集計し、これに基づいて、市、町、郡のレベルでの生活賃金を算出したサイトです。数クリックで、自分が住んでいる場所の「生活賃金」を見つけることが出来ます。しかも、家族構成に応じて、最低限どれだけの「生活賃金」が必要か分かるようになっています。これもビッグ・データを活用したソーシャル・イノベーションだと言えるでしょう。
日本でも「最低賃金」は議論されています。これに連動して、「生活保護」が「最低賃金」より高いのは問題だという議論が展開されています。しかし、そうやって弱者を切り捨てていくことは、結果的に貧困を再生産していくだけです。それは、結局、社会的不安を生み出し、社会的コストの拡大を通じて社会全体に跳ね返ってきます。むしろ議論すべきは、最低限の生活が可能な所得をいかに保証し、それによって社会全体の活性化を図っていくという視点だと思います。「生活賃金」の議論は、もはや日本も他人事ではなくなる時代に来ています。
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