Lean Dataのさらなる展開

先日お伝えしたアキュメン・ファンドの新たな評価手法Lean Dataについて、スタンフォード・ソーシャル・イノベーション・レビュー(SSIR)が追加で記事を掲載しました。記事からは、ケース・スタディとフィールド・ガイドもダウンロードできるようになっていてお勧めです。

Lean Dataの詳細については、前の紹介記事を見て頂きたいのですが、今回のSSIRの記事と2つのレポートに目を通して分かったことは、アキュメンが目指しているのが、「インパクト評価」という考え方から「社会的パフォーマンス評価」へのシフトだということです。

「インパクト評価」は、ある社会的介入のインパクトを定量的に評価しようという試みですが、これには厳密な因果関係や調査手法が求められ、経費も手間もかかります。インパクト投資家に対する報告という観点からは必要なのかもしれませんが、本来、RCTを導入することが求められるような評価は、現実的ではありません。

これに対し、Lean Dataが追求する「社会的パフォーマンス評価」は、ある社会的介入との厳密な因果関係を追求せず、ユーザーへのアンケートを中心に入手できるデータだけで、ポジティブな波及効果を測定しようとします。厳密さを犠牲にする代わりに、経費と手間を減らし、同時に社会的企業家のマーケティングや製品開発戦略へのフィードバックを重視しようという考え方です。

おそらくLean Data的な考え方は、収益優先の社会的投資家のニーズを満たすことは出来ないかもしれません。しかし、アキュメンがターゲットにしているインパクト優先の投資家には、これで十分なのでしょう。Lean Dataがスタンダードになれば、インパクト優先投資家がより参入しやすくなることも期待できます。

これ以外にも、あらたに発表されたフィールド・ガイドには、現在利用可能な低価格の調査ツールや、RCTの代わりに使えるグラミン財団開発の貧困指標などについての情報も掲載されていて便利です。さらに、アキュメンは、Lean Dataに関するトレーニングをウェッブ上で開始するとのこと。今後の展開が期待できます。

http://ssir.org/articles/entry/leveraging_lean_data

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