フィラデルフィアがランド・バンクを設立

再びニューヨーク・タイムズの記事から。フィラデルフィアがランド・バンクを設立し、廃屋や廃ビル、空き地などの再活用に乗り出したそうです。記事によると、フィラデルフィアには、そのような見捨てられた不動産が40,000件もあり、治安の悪化やそれに伴う周辺地域の不動産価値の減少、さらなるインナー・シティ化という悪循環に陥っているとのこと。これらの土地の多くは所有者が不明で不動産税も支払われていないのですが、フィラデルフィア市は、ランド・バンクを通じてこの再活用に取り組むようです。具体的には、都市農園、コミュニティ・スペースやアート・スペース、さらに低所得者向けの適正価格住居開発や商業スペースとしての開発なども視野に入れるとのこと。ランド・バンクでは、投機目的のみで不動産を取得し、一切開発しないで不動産価格の上昇と共に売却する投機業者の排除もあわせて検討するとのことです。

私自身も、フィラデルフィアで1年過ごし、また大学院の実地見学でインナー・シティの深刻な現状を目の当たりにしたので、このプロジェクトは応援したいと思います。やはり廃墟のようなビルや工場が建ち並んだ地域は危険になりますし、一度危険になると出て行ける住民はどんどん郊外に逃げていきますので、インナー・シティ化が急速に進みます。治安の悪化と経済状況の悪化の悪循環の中で、貧困と犯罪が再生産されていきます。NPOや行政の介入だけではこの阻止に限界がありますから、ランド・バンクのような仕組みを通じて、もう一度インナー・シティに投資資金を呼び戻し、コミュニティと経済を回復させるというのは良いアイディアだと思います。これは、大資本による巨大開発ではなく、コミュニティの身の丈に即した開発であるために、一度うまく回転していけば、持続可能なものになり得ます。

さて、日本ではどうでしょうか。少子高齢化による人口減少で、地方における限界集落の問題が取りざたされていますが、実は、都市圏でも高度経済成長時代に作られた巨大団地の中には、限界集落化が始まっている地区もあります。これを廃墟として放置すれば、やがて米国が直面しているのと同じ問題に直面するでしょう。ランド・バンクのように、巨大資本による開発ではなく、既存の不動産を活用して社会的資本として再生させるという智恵が日本にも必要な気がします。

http://www.nytimes.com/2013/09/23/us/philadephia-hopes-a-land-bank-will-combat-urban-blight.html

Share MeFacebooktwitterlinkedinmailby feather

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。