企業にとって社会問題の解決はチャンスであるか?

ダイアモンド社ハーバード・ビジネス・レビューの記事から。ジョセフ・バウアー教授の議論は、「CSVのように社会的共有価値を強調しなくても、現在の政府は非効率で社会的課題を解決出来ず、企業が営利活動の一環としてこれにソリューションを提供することが出来る。社会的課題は巨大な需要があるから、これは企業に取っても大きなビジネスチャンスである。」という議論を展開しています。

ハーバード・ビジネス・スクールらしい議論で、それなりに面白いとは思います。しかし、政府の役割を過小評価し、企業がすべてを解決出来るというような彼の議論は、どうも新自由主義+ティーパーティーのイデオロギーを感じてしまいます。そもそも、彼が成功例としてあげているケニヤのモバイル通貨Mペサが英国開発庁の巨額の支援によって立ち上げられた事業です。また、別の成功例としてあげているカーン・アカデミーは、米国助成財団の支援なしには「ビジネスとして立ち行かない存在」です。あたかも市場とビジネス・セクターがすべてを解決出来るという彼の議論は、あまりにも現実を知らない議論か、あるいは事実関係を踏まえた上であえて語っているのであれば、偏向しすぎています。こういう議論には注意が必要ですね。

余談ですが、いつもこういう議論を読みながら感じることは、こういう教授達の講義を受けているハーバード・ビジネス・スクールのエリート達の怖さです。彼らは強力なパワーを現実に行使できるわけですが、その発想の出発点がこれでは、ソーシャルな仕事に本当に取り組めるのか不安になります。知と権力の結合が社会を極端な方向に持っていかないようにするためにも私達は注意深くモニターしておく必要があると思います。
http://www.dhbr.net/articles/-/2242

Share MeFacebooktwitterlinkedinmailby feather

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。