米国マサチューセッツ州が最大規模の成功報酬債を立ち上げ

2014年1月29日、マサチューセッツ州は、総額2700万ドルにのぼる成功報酬債契約を締結したと発表しました。米国では、現在、成功報酬債(PFS: Pay for Success Bonds)という名称で社会的インパクト債の導入が進められていますが、その中でもこれは最大規模のものです。もしこの試みが成功すれば、今後、このような大規模のプログラムが米国各地で立ち上がることが期待されます。

今回の事業の対象は、マサチューセッツ州における青少年受刑者の再犯防止措置。この分野で活動するRoca, Incに資金を提供し、7年間で929名の青少年への集中的なアウトリーチを実施、これによって彼らの再犯防止と社会復帰を目指します。一人当たり単純計算で約3万ドルの経費を投入することになるわけですが、失敗したときに係る社会的コスト(犯罪被害コスト、裁判・服役に係るコストなど)と成功したときの社会的便益(更正して就職した際に生み出される財・サービス及びこれにより期待される生涯賃金の上昇、これに伴う税収増と社会福祉サービスの削減、さらにこれによるコミュニティの治安改善がもたらす地価上昇や街の再生など)を考慮すると、十分にペイするプロジェクトだというロジックです。

総経費2700万ドルは、連邦政府労働省のPFS補助金1170万ドルの一部に、資金仲介団体のサード・セクター・キャピタルが調達した1800万ドルで賄われます。後者の内訳は、ゴールドマンサックスの社会的インパクト基金900万ドル、クレスゲ財団のローン150万ドル、リビング・シティズのローン150万ドルと、ボストン財団など財団のグラント600万ドルです。なお、ボストン財団などのグラントは、事業が成功すれば財団に償還されますが、この資金は償還後も新たな成功報酬債の試みに再利用されるとのことです。

この情報ボックスでもたびたび社会的インパクト債/成功報酬債の話題を取り上げていますが、英国で立ち上げられ、米国でも近年本格的に導入されているこのメカニズムがうまく立ち上がるための要因は、以下の点にあります。

1. 中央政府の支援(労働省の補助金)、
2. 地方政府の強いコミットメント( マサチューセッツ州知事の青少年再犯防止にかける熱意)、
3. 実績を証明済みの強力なNPOの存在(Roca, Incの取り組み)、
4. 専門性を持った資金調達のための仲介団体の存在(サード・セクター・キャピタルの取り組み)、
5. 資金のリスク部分を引き受ける財団セクターのコミットメント(クレスゲ財団他のプログラム関連投資とボストン財団他のグラント)

こうした条件が整って初めて、ゴールドマンサックスのような民間金融機関の900万ドルの投資が可能になります。社会的インパクト債は、どうしても民間金融機関の投資が注目を集めがちですが、その背景には、これを支える制度的基盤があることを忘れてはならないでしょう。

いずれにせよ、米国における成功報酬債に向けた取り組み、今後も要注目ですね。なお、事業の詳細については、以下のサイトに掲載されているプレスリリースをご参照下さい。

http://www.mass.gov/…/20…/0129-at-risk-youth-initiative.html

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