かなり以前ですが、「インパクト・ソーシング」というコンセプトを紹介したことがあります。これは、IT産業などでソフトの開発をするときなど、コーディングの一部を開発途上国にアウト・ソーシングすることで、開発途上国の若者の雇用支援や教育支援を行おうというもの。米国のNPOが中間支援団体として入り、米国の大手IT企業と交渉しながら、作業の中の比較的簡単な部分を開発途上国のNPOに回し、開発途上国側では若者を訓練して、その仕事を通じて雇用します。採用された若者には、大学進学のための奨学金なども支給されるというシステムです。Digital Jobs AfricaやSama Groupなどが有名です。
スタンフォード・ソーシャル・イノベーション・レビューの記事によると、このインパクト・ソーシングが米国に逆輸入されるようです。このインパクト・ソーシング、基本は、コーディングのトレーニングを行うことと、大手IT企業と交渉して適切な価格で仕事を受託すること。このためにはトレーニング・プログラムの充実が欠かせないわけですが、Sama Groupは、Sama USAを立ち上げ、米国内でも同様のトレーニング・プログラムを開始するとのことです。
もちろん、米国と開発途上国の状況は異なりますから、トレーニングの内容はよりマイクロ・エンタプライズ支援に焦点を当て、単なるコーディングのスキルだけでなく、起業、契約、請求などの一連の実務も学べるようになっています。今後、Sama USAは、コミュニティ・カレッジや地元の支援組織と連携して、トレーニング・プログラムを拡大していくとのことです。
興味深いのは、このプログラムに参加する人たちが、10代、20代の若者以上に、定年を控えた団塊世代だったという点。やはり米国でも老後の不安が大きいと言うことでしょうか。急速に高齢化が進んで貧困老人の問題が深刻化することが予想される日本でも、検討すべき手法だと思いました。