社会的インパクトを実現する手法として、伝統的にはモデル事業の確立と組織のスケールアップの2つがあります。
前者は、財団などが主導して、ある分野のモデル事業を確立し、これを社会に発信することで他の組織がこれに続くことを期待するという手法です。このために全国ネットの中間支援組織が作られ、ベスト・プラクティスの共有やテクニカル・アシスタンスが行われてきました。
後者のスケールアップは、ある特定の組織の手法が優れていると判断したら、この組織のスケールアップを行って、全国展開させるという手法です。社会的インパクト投資家の基本戦略はこれですし、たとえば、近年のアメリカのソーシャル・イノベーション・ファンドもこの戦略を踏襲しています。
これに対し、近年、英国で提唱されているのが、ソーシャル・フランチャイズです。これは、マクドナルドやスターバックスのように、あるビジネスモデルとブランドを確立させ、これをフランチャイズ形式で全国展開しようという発想で、現在、英国では、社会的企業にこれを適用できないかという点が議論されています。
少し古い記事ですが、ガーディアン紙の2013年の記事が、この社会的企業のフランチャイズの可能性について論じているのでご紹介しておきます。これによると、フランチャイズ方式のメリットは、ブランドとビジネスモデルを確立しておけば、それほど大きな投資をしなくても迅速に展開が可能だというメリットがあるとした上で、これが実現するための条件として、10のポイントを挙げています。具体的には、(1)社会的インパクトはきちんと実証され、評価されているか、(2)そのビジネスモデルは持続可能なモノとしてきちんと開発され、実証されているか、(3)リーダーの個人的な資質などの特殊なアセットなしに他の地域でも展開可能か、などなどです。
社会的インパクト投資を通じたスケールアップは、下手をすると、一極集中を招き、ソーシャル・セクターに勝ち組と負け組を作ってしまう可能性があります。これを補完するものとして、ソーシャル・フランチャイズという考え方は今後発展していくかもしれません。これも要チェックですね。