英国ファンドレイジング基準委員会の新方針

以前にご紹介しましたが、昨年、英国で、ある老女が慈善団体からの大量の寄付勧誘状を送られて精神的に追い詰められ、自殺するという事件が起きました。これを機に、英国ファンドレイジング団体の独立自主規制団体である英国ファンドレイジング基準委員会(FRSB: FundRaising Standards Board)が、事件の調査を開始し、ファンドレイジング基準の再検討を重ねてきました。その成果は、昨年6月に中間報告という形でまとめられていたのですが、今回、最終報告が発表されました。

報告によると、その老女の元には、ピーク時には年間466通の寄付勧誘状が送りつけられていたと言うことです。これは、週平均9通以上のDMが送られてきたことを意味します。確かに、この状況はひどいと思います。さらに、調査の結果、寄付依頼を送っていた慈善団体は、老女に送付先から除外する機会を与えていなかったことや、老女の同意なしに、連絡先を他の慈善団体や第三者の機関と共有していたことも明らかになりました。これは、明らかにプライバシーの侵害にあたります。

この事件については、英国世論も非常に批判的で、慈善団体に対する寄付勧誘に対する規制が高まっていました。これを受け、英国ファンドレイジング基準委員会は、報告書で以下の方針を打ち出しています。

1)プライバシー保護に関する法令の遵守
2)勧誘対象者の送付除外の権利確保
3)寄付勧誘の回数や頻度に対する配慮

いずれも、基本的なことばかりですが、ファンドレイジング基準委員会が改めてこのガイドラインの見直しと徹底を呼びかけざるを得なかった点に、事態の深刻さが表れています。

ファンドレイジングは、非営利団体にとっては死活的に重要であり、善意の資金を集めるという意味では社会的にも意義があります。しかし、ファンドレイジングも専門化が進み、規模が大きくなれば、当然社会的な関心も高くなり、問題点も表面化してきます。事態が深刻化し、政府が介入して規制が強化される前に、まずは英国のように自主・独立団体による自主規制ルールを制度化し、これが広く共有されることが、ファンドレイジング業界全体にとって重要となります。英国の事例は、日本のファンドレイジングの今後の発展にとっても様々な示唆を与えてくれています。

http://www.frsb.org.uk/data-sharing-by-charities-led-to-hi…/

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