米国でも深刻化している格差・貧困の問題。これに取り組むには、様々なアプローチがあります。累進課税の強化を通じた資産の再分配、低所得者層向けの福祉や職業訓練の充実、セイフティネットの拡充等々、様々な取り組みが進められてきました。
その一つ、「資産と機会のネットワーク(Assets & Opportunity Network)」は、この問題に、貧困層の資産形成の支援と、貧困層が貧困状態から脱却するための機会(教育、就業、起業等)の提供を通じて取り組んでいます。日本でも、昨年、生活困窮者自立支援法が施行されて、このような自立支援に向けた取り組みが開始されましたが、このネットワークは90年代からこの問題に取り組んできており、その先進的な取り組みは、日本でも参考になります。
このキャンペーンは、今日、1月25日から1週間行われます。まず、ネットワークが最新のAssets & Opportunity Scorecardを発表します。これは、全米各州の、金融排除の現状や失業率、子供の就学率、住宅所有率などを指標化して比較できるようにしたものです。これを見れば、各州で、今後、どの分野が早急に取り組まれなければならないかが概観できます。
その上で、金融機関へのアクセス強化のためのクレジット・ビルディング、貧困層向けの過酷な貸付事業への規制強化、子供の格差是正のための子供貯蓄口座の推進など、毎日、テーマを決めて、イベントやキャンペーンが行われます。もちろん、議会向けのアドボカシー活動もなされます。
日本では、まだ金融包摂や資産形成に着目した支援は、まだ一般的ではありません。しかし、海外では、近年の行動経済学の発展や、ファイナンシャル・ダイアリーの研究の蓄積により、貧困・格差の問題の解消のためには、金融面からのアプローチも重要であることが認められるようになってきました。今回のキャンペーン、ぜひ日本でもより多くの人に知って頂ければと思います。