社会的企業とは、ビジネスの手法を活用し、製品・サービス・雇用などを通じて、社会的課題を解決しようという試みです。
たとえば、障害者の問題を考えた時に、障害者でも利用できる様々な製品やサービスを開発して手ごろな価格で商品化するというのも社会的企業の試みですし、あるいは障害者が働きやすい職場環境を整備し障害者を積極的に雇用して社会参加を促進するのも社会的企業です。
法人格としては、営利・非営利の双方があり得ますし、またハイブリッドな法人格も考えられます。ビジネスの手法を取り入れているため、一定程度の収入基盤がありますから、補助金のみに依存する非営利法人に比べると持続性が高いというメリットもあります。
現在、世界各国で、こうした社会的企業を活用してポスト福祉国家モデルを形成しようという試みがなされています。米国でも、1990年代から様々な取り組みが行われてきました。
こうした試みの中で、初期の段階から、ベンチャー・フィランソロピーを提唱し、SROIの評価手法を開発し、さらに社会的企業の成長段階に応じたファイナンス環境の整備の必要性を訴えてきたのがREDFという団体です。REDFは、まさに米国の社会的企業の先駆者だと言えるでしょう。
そのREDFが、最近、「インパクトを持続させる」という報告書を発表しました。これは、全米10件の代表的な社会的企業モデルのケーススタディを通じて、社会的企業が持続的に発展し、さらにスケールアップしていくために必要な条件を分析したものです。REDFらしい、よくまとめられた報告書です。
ケーススタディが面白いので、ぜひ直接報告書を読んでいただきたいのですが、とりあえず、結論だけ紹介しておくと、社会的企業の持続・スケールアップに必要な要素は以下の5つです。
■アンカー組織
→社会的企業の製品やサービスを購入する中核的な民間または公的セクター。やはり大口の購入者があって初めてビジネスの拡大が可能となります。
■大胆さ
→市場のニッチを求める社会的企業にとって、新たなビジネスモデルを見いだし、ユニークな製品やサービスを開発する大胆さは不可欠です。
■エビデンス
→データに基づくパフォーマンス評価とインパクト評価は、経営の効率性を高め、社会的・財務的報告の透明性を向上させる上で不可欠です。
■成長資金
→すべてのビジネスが成長するためには、そのために必要な成長資金をきちんと確保する必要があります。
■アイデンティティ
→そして、何よりも重要な点が、他の組織と異なる自らのアイデンティティを確立することです。それは、組織のブランドの基礎となり、組織文化の洗練を通じて組織に活力をもたらし、さらに独自の意思決定や作業プロセスの発展を通じて、苦境を生き延びる耐久力を組織にもたらします。
いかがでしょうか?すべての要素は自明ではありますが、なかなか実施が難しいものです。報告書は、これをどう確保するのか、具体的なケーススタディに基づいて明らかにしてくれているので、参考になります。
REDFは、伝説的な事務局長であるJed Emersonが抜けてからしばらく勢いを失っていたようですが、どうやらより実践的な組織として復活してきたようです。これからの発展が楽しみですね。