デジタル技術を公益分野で活用するための様々な試みが始まっています。代表的な例としてはCode for Japanの活動があります。被災者支援やコミュニティ開発などに役立つアプリの開発を行う非営利組織です。また、最近、注目が高まっているFinTechの分野でも、金融包摂を目指した製品・サービスの開発が始まっています。スマートフォンが普及し、安価できめの細かいサービスが双方向で可能となったため、デジタル技術は公益セクターに革命的な変化をもたらすことが期待されます。
このような動きをさらに加速させると同時に、デジタル技術の公益分野における活用がもたらす潜在的な危険性の防止も図ろうという趣旨で、新たな支援プラットフォームが立ち上がりました。The Netgain Partnershipです。これは、フォード財団、ナイト財団、マッカーサー財団、オープン・ソサエティ財団、Mozilla財団の5財団による共同ファンディング・プラットフォームで、デジタル技術を活用した市民社会の発展に取り組むため、様々なプロジェクトに資金を提供するとのことです。
プラットフォーム設立にあたり、多数の有識者や関係者へのヒアリング結果をまとめた報告書も発表されました。報告書では、デジタルを活用した市民社会の発展のために必要な施策として、デジタル包摂の推進、人材育成、研究体制の整備など様々なプログラムの可能性がリスト化されています。
また、プラットフォームは、支援に当たっての原則も公開しました。そこでは、インターネットを開かれた公平なものにすること、デジタル技術を活用して市民社会を促進すると共にこの技術がもたらす潜在的な危険性の防止にも努めること、このためのデジタル・リテラシーの向上や各界指導者法海の促進を図ること、特に個人情報保護と情報セキュリティの確保のために制度設計を進めることなどが謳われています。
プラットフォームは、まず最初の支援団体として、ニューアメリカ財団のオープン・テクノロジー・インスティチュート、ハーバード大学データ・プライバシー・ラボ、Code for America、ニュー・ベンチャー・ファンドのメディア・デモクラシー基金などを選定しました。それぞれ、デジタル分野で先駆的な活動を行っている団体です。
デジタル市民社会が理念ではなく現実となりつつある現在、このプラットフォームは非常にインパクトのあるものになると思います。特に、スコール財団やオミディヤ・ネットワーク、あるいは最近のザッカーバーグ・イニシアチブのように、ある意味では業界団体の人間が設立した財団ではなく、フォードなどの伝統的な財団がこの領域に入ってきたことは歓迎すべきだと思います。これにより、議論がより重層的で多面的になることが期待されます。プラットフォームの詳細については、以下のサイトをご覧下さい。