社会的インパクト債を開発協力に適用した国際インパクト債(DIB: Development Impact Bond)の第一号がインドのラジャスタンで進行中です。プロジェクトを立ち上げたのは、Instiglio。対象となっているプロジェクトは、インドの女子児童9000人を対象とした教育です。
プロジェクトの初期資金は、UBS Pltimus財団が提供します。公表資料では、総額267,000ドル規模だとのこと。この資金に基づいて、Educate Girlsという団体が、ラジャスタンの女子児童教育に取り組みます。そのアウトカムをIDinsightと言う団体が評価します。評価指標は、学習達成度や就学率の向上です。これが一定の基準をクリアすれば、成果の達成度に応じて、子供投資基金財団が元本にリスクをつけてUBS Pltimus財団に支払うというのが基本的なメカニズムです。期間は、2015年から2018年の3年間。仮に、ラジャスタンでのプロジェクトが成功すれば、インド全土にプロジェクトを拡大していくとのことです。
このプロジェクト、今のご説明でもお分かりいただけるように、政府の財政支出が削減されるということはありません。単に、資金提供者の子供投資基金財団が、成果達成度に応じて経済的リターンを支払うだけです。この意味では、財政支出の削減分を原資とする先進国型の社会的インパクト債とは異なります。むしろ、成果連動型補助金に近い形であると言えるでしょう。
ただし、直接的な財政削減効果がなくても、女子教育を通じて女性の教育水準が向上すれば、就業率拡大や衛生・出産知識の向上などをもたらし、最終的に地域の生活水準の向上に結びつきます。この社会的価値を考えれば、社会的インパクト債の一類型であると言えるかもしれません。
先日ご紹介したブルッキングス研究所の報告によると、DIBは、現在、アフリカ、中近東、ラテンアメリカ諸国でも導入が検討されているとのこと。どのような領域を対象に、どのような枠組みで行われるのかは今後、明らかになってくると思いますが、一つだけ、確実に言えることは、開発協力の分野においても、DIBのような形で、明確なアウトカム指標を設定し、この評価に基づいた成果連動型の資金提供スキームが、今後、広がっていくだろうという点です。これが、開発協力にもたらす影響についても、議論が展開していくことでしょう。