ケンブリッジ大学オルタナティブ・ファイナンス・センターとNestaが、英国のクラウド・ファンディング市場についての「2015年度英国オルタナティブ・ファイナンス・インダストリー・レポート」を発表しました。ベンチャーや中小企業のみならず、社会的企業や協同組合、さらにNPOなどの資金調達でもますます重要性を増すクラウド・ファンディング・プラットフォームの現状を理解する上で必須の資料です。
報告書は、まず2015年の英国におけるマーケットの規模を32億ポンドと推計しています。2014年に比べて84%増と、まさに急速にマーケットが成長していることが分かります。資金提供者数は109万人、資金調達者は25万4700人で裾野も広がってきました。このプラットフォームは、既に英国の中小企業の貸出総額の12%、スタートアップへの投資総額の15.6%を占めるに至っています。
マーケットの主流は、P2Pレンディングとエクイティ型クラウド・ファンディングです。ここには、ビジネス、不動産、個人貸し付けなどが含まれます。成長を支えているのは、まさにこの部分です。特に、エクイティ型クラウドファンディングは前年比295%増と急成長を遂げています。社会的企業だけを取りだした統計はありませんが、これらのマーケットは中小企業のみならず、社会的企業にとっても魅力的な資金調達手段となります。
非営利セクターに関しては、協同組合が利用するコミュニティ・シェアが前年比79%増の6100万ポンド、非営利組織が利用する購買型クラウド・ファンディングが前年比61%増の4196万ポンド、同じく寄付型クラウドファンディングが前年比507%増の1213万ポンドとなっています。こちらも順調に発展しています。特に、寄付型クラウドファンディングの急増が際立っています。
クラウドファンディングの魅力は、ソーシャルなネットワークを駆使し、経費をそれほどかけずに資金を調達することが出来る点です。社会的ミッションを掲げて活動する社会的企業や非営利組織にとっては非常に強力な資金調達ツールになります。特に、P2Pレンディングとエクイティ型クラウドファンディングが制度化されてきたことで、社会的企業の資金調達の可能性が大きく広がりました。今後、まだまだ発展の余地がありそうです。
他方、報告書は、潜在的なリスクにも警鐘を鳴らしています。最大のリスクは、「詐欺・不正」と「サイバー・セキュリティ」です。ネットを介した取引であるため、どうしてもチェックが行き届きません。また、個人情報の流出リスクをどうコントロールするかも大きな課題です。この部分を巡って、市場と規制の微調整が今後もしばらくは続くことになるでしょう。
いずれにせよ、非営利、営利、協同組合を問わず、資金調達の強力なツールとなってきたクラウドファンディング・プラットフォーム。英国の現在は、日本の近未来でもあります。今後とも要注目の分野だと思います。
http://www.jbs.cam.ac.uk/…/publications/pushing-boundaries/…