日本では、社会的インパクト債を政府の財政削減のための有力なツールであるとする誤解が一部で広まっているようです。しかし、社会的インパクト債は、あくまでも「成果志向型ファンディング(Outcome-based Funding)」という大きなカテゴリーにおける、パブリック・プライベート・パートナー型資金調達手法だと理解すべきです。財政削減というのは、主目標ではありません。
この問題を考える上で有益な論考が、米国Government Executive紙に掲載されましたのでご紹介しておきます。タイトルは「成果を生み出す契約をいかにデザインするか」です。
論考では、まず政府の公共調達や補助金において、社会的インパクト債と「業績連動型契約(Performance-Based Contracts)」を区別することから出発します。後者は、一定の成果目標を掲げて調達や助成を行い、成果の達成度に応じて資金を提供するという手法です。社会的インパクト債との相違点は、(1)民間投資家の資金を前提条件としない、(2)このため、中間支援機関を立てたり複雑な契約を締結する必要がない、ことにあります。
その上で、論考は、以下のとおり、両者の特徴を整理します。
▪️社会的インパクト債
・サービスのインパクト測定手法が明確に規定されている
・新たなイニシアチブの妥当性や有効性を検証することができる
・超党派の支持を得ている。
▪️業績連動型契約
・枠組みが明快で理解しやすい(このため、契約もシンプル)
・民間資金の事前調達は不要(通常は前渡し金+成果報酬)
・事業実施期間中の柔軟な変更が可能
・事業のスケールアップに有効
その上で、論考は、社会的インパクト債を活用して様々な事業モデルの有効性を検証した上で、成功した事業については業績連動型契約に切り替えてスケールアップを図っていくことにより、全体として成果志向ファンディングを政府のソーシャルセクター向け補助金・公共調達に定着させていくべきだと結論しています。この議論、今までの成果志向型ファンディングをめぐる議論の蓄積に立って、社会的インパクト債を理解しようという点で興味ふかいと思われます。
現在、日本でも社会的インパクト債が注目されています。しかし、実は以前から地方自治体では、成果志向ファンディングに向けた試行的取り組みが進められてきました。社会的インパクト債を日本に導入していく際にも、このような過去の成果志向型ファンディングの実績をきちんと踏まえて議論することで、より有意義な政策論が展開できるのではないでしょうか。
http://www.govexec.com/…/how-design-contracts-deli…/127250/…