貧困ポルノを巡って

ノンプロフィット・クオータリーによると、オーストラリア国際開発協議会が、サンライズ・カンボジアという孤児支援団体を、「貧困ポルノ」を理由に批判しているとのことです。サンライズ・カンボジア側は、これに反論しているとのこと。

「貧困ポルノ」とは、「貧困」や「飢餓」などを誇張したステレオタイプ的イメージを流布させることを指します。80年代の国際的な反飢餓キャンペーンや人道キャンペーンの際、資金調達のためにステレオタイプ的な「貧困」や「飢餓」のネガティブ・イメージが多用されたことへの反省から生み出された言葉です。

飢えて骨と皮だらけになった子供達や貧困状況の中で悲惨な姿をした人々の写真は、人々の感情に訴えかける力を持ちます。しかし、これをファンドレイジングのために流通させることは、被写体となった人達の尊厳を損ない、彼らの生々しい姿をある種の「ポルノ」として人々の好奇の目にさらしてしまいます。「貧困ポルノ」という概念は、こうした事態に警鐘をならします。

今回、サンライズ・カンボジアは、カンボジアの「孤児」達の写真をキャンペーンに使用して20万ドルの寄付金を集めました。写真は、「孤児」達の同意に基づいて撮影され、きちんと謝金も支払われていたとのこと。その意味で、違法性はないのですが、ファンドレイジングを目的にした露骨なステレオタイプのイメージを多用してファンドレイジングを展開したことが批判の対象となりました。

その背景には、カンボジアで進む「貧困ビジネス」の拡大があります。カンボジアでは、実際には両親がいるにもかかわらず「孤児」を売り物にして寄付を募る団体が急増しているという統計があります。そのために、「孤児」の写真が大量に生産され、観光ガイドやパンフレットにまで掲載される事態になっているとのこと。

「貧困ポルノ」は、ファンドレイジングの手法としては強力ですが、貧困のステレオタイプ化や「チャリティ化」を生み出すだけで、真の問題の解決にはなりません。本当に必要なことは、貧困を生み出す背景をきちんと把握し、貧困層の自立化に必要な支援を組織化していくことです。

「貧困ポルノ」の問題については、欧州の開発・人道支援組織のネットワークであるCONCORDが「イメージとメッセージに関する行為規範」を制定しています。今回の問題は、改めて、ファンドレイジングの際の規範遵守の重要性を浮かび上がらせました。

https://nonprofitquarterly.org/…/poverty-porn-do-the-mean…/…

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