成果志向型システムの功罪

1980年代以降、英国、米国、NZ、オーストラリアなどで導入されたニューパブリック・マネジメントは、成果志向を全面的に打ち出し、様々な行政改革を行いました。その一つが「成果志向契約(Contracting for outcomes)」。行政が、業務委託契約や調達契約を行う際、事業成果に連動する形で報酬を支払うというシステムです。これは、その後、成果連動型補助金(Payment by Results)へと拡大しました。現在、日本でも注目を集めている「社会的インパクト債(Social Impact Bond)」も、この手法の一つです。

こうした成果志向型システムは、行政の効率性や効果を高めるという点が期待されたのですが、一方で、様々な問題があることも分かってきました。オーストラリアの公共政策ディスカッションサイト「The Mandarin」が、最新の研究成果を踏まえて、この問題を取り上げています。

記事によると、成果志向型システムには以下のような問題があります。

1.目標とする成果とターゲット層との不一致
⇒成果志向で採用されるKPIが一面的で単純化されているため、ターゲット層の真の生活の向上に結びつかない。ある場合には、成果達成が自己目的化してしまう場合もある。

2.事業者の硬直性と画一化をもたらす
⇒もともと成果志向型システムは、行政の役割を成果目標の設定に限定し、実施方法は事業者の経営判断に委ねることで、事業者の柔軟性と個別化の促進を目指しました。しかし、事業者は、成果目標の最大化を目指して「いいとこ取り(Cream Skimming)」に走り、これを規制すると結局、事業者の画一化をもたらすという事態が頻発しています。

3.その他、意図せざる負の結果が現れたり、そもそも目指している成果と施策領域に不一致が見られるなどの問題点もある。

成果志向型システムは、一見すると行政の効率性を向上させ、政策効果を高めるように見えますが、第三者の目から検証すれば、非常に一面的なものになるおそれがあるということでしょうか。

記事は、成果志向型システム自体を否定するわけではありませんが、これがきちんと機能するためには、(1)行政が成果目標設定の際に、様々な利害関係者からの意見を聴取して現実的で実効性のあるものにしようと努めること、(2)契約の際には事業者の現場の意見を尊重すること、(3)副次的な負の影響なども含めた検証システムを整備すること、などが必要だと指摘しています。

現在、日本でも成果志向型システムへの関心が高まっています。しかし、これを推進する上では、単に成果志向型システムを礼賛するのではなく、このような海外の議論を踏まえて慎重に導入する必要がありそうです。

http://www.themandarin.com.au/65964-outcomes-based-contra…/…

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