インパクト投資の波はアジアに押し寄せつつあります。今までにも何度か紹介しましたが、シンガポールで設立が検討されている社会的証券取引所はその一例です。またアジア・ベンチャー・フィランソロピー・ネットワークも、ベンチャー・フィランソロピーという形でインパクト投資の発展に努めています。
この点について、少し古いレポートですが、Avantage Venturesが2011年8月に公表した報告書Beyond The margin: Redirecting Asia’s capitalismを紹介しておきます。報告書は、アジアの開発において、民間資本を社会的インパクト投資として導入することでアジアのソーシャル・セクターを充実させるよう提言しています。特に優先的なターゲットは、適切な価格の住居提供、水資源管理と衛生、農村エネルギー、農村部における高齢者医療保険、基礎教育、農業ビジネスの6つの分野です。この報告書のユニークな点は、セクター毎にどれぐらいの資金需要があるのか、プロフィット・マージンはどの程度見込めるのか、などを試算している点。これは今後の資本市場を考える上で参考になります。
報告書は、さらに、現在、アジアの高額所得者が持っている資産は860億ドルと推計され、その1%がインパクト投資に回されれば、ほぼ現時点でのアジアの社会的企業家のニーズが満たされるとしています。また、現在、海外からアジアへの直接投資額2746億ドルの1%がソーシャル・セクターに回されれば、巨大な市場が生まれることも提言している。
もちろん、これを実現するためには、制度的な整備が必要です。社会的資本市場を整備し、投資を受けるだけの社会的企業家の経営能力を高め、さらに社会的インパクト投資の発展に不可欠な社会的報酬評価手法が一般化しなければなりません。JICAやADBなどの国際開発期間や助成財団が各国政府・NGOと連携して基盤整備を進める必要があります。
今後のアジアのインパクト投資発展を考える上で示唆に富む報告だと思います。
http://www.avantageventures.com/advisory/research
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