社会的インパクト投資というと、ロックフェラー財団やフォード財団などの大型財団が、ゴールドマンサックスやJPモーガンのような巨大投資金融機関と組んで何百万ドル単位でのコミットをするというのが一般的なイメージではないでしょうか。
確かに、こうした試みはジャーナリズムの脚光を浴びるのでどうしても目立ちますが、本来、「社会的インパクト投資」とは、「一定の経済的リターンを確保しつつ、客観的に測定可能な形で社会的リターンを実現しようという試み」です。寄附の世界でも、バフェットのような億万長者が巨額の寄付をする一方で、普通の人たちがささやかな寄附をしてコミュニティ団体の活動を支えているように、社会的インパクト投資においても、普通の人がささやかながらも参加できる枠組みがあってよいでしょう。
この情報ボックスでも何度もご紹介しているコミュニティ型社会的投資の先駆的存在であるカルバート財団が、AARP財団と立ち上げたAGE[STRONG]というプロジェクトは、まさに、「普通の人が社会的インパクト投資に参加できる枠組み」を提供しようというものです。
このプロジェクトは、50歳以上の高齢者の医療保険や住宅取得、あるいは起業を支援するための投資枠組みです。AGE[STRONG]を通じて、資金は、ROC USAや、Meals on Wheelsのようなコミュニティ開発機関に投資されます。各コミュニティ開発機関は事業を通じて資金を回収し、一定のリターンを投資家に配分するという形を取ります。
資金募集は、コミュニティ手形という確定利付債券の形を取ります。最低金額は手形の場合は1000ドル、オンラインの場合はなんと20ドルからです。確定利付債券ですので、リスクは最小限に抑えられ、さらにプロジェクトがうまくいかなかった際のリスクはAARP財団がプログラム関連投資でカバーします。
高齢化が進む日本。このプロジェクトがうまくいけば、日本でも社会的インパクト投資のモデル事業として注目を集めそうです。