この情報ボックスでも何度も取り上げている集合的インパクト(CI: Collective Impact)。説明するまでもなく、FSGのマーク・クレマーがスタンフォード・ソーシャル・イノベーション・レビュー(SSIR)で提案した考え方で、様々なステイクホルダーが共通の評価指標に基づいて最大限のインパクトを発揮するという枠組みで、大きな注目を集めました。
CIのコンセプトは、その後、CI Forumの設立を通じて全米レベルで展開しています。さらに、近年は、CIに特化した評価フレームワークを打ち出し、その中で改めて開発的評価(Developmental Evaluation)の重要性を打ち出すなど、CIの枠組みは発展しつつあります。
こうした中、マーク・クレイマーがSSIRで新たなシリーズを打ち出しました。タイトルは「公平性と集合的インパクト」。CIのフレームワークの中で、今まで十分に議論されてこなかったけれど、おそらく最も重要な要素である「公平性(Equity)」をどのようにビルトインしていくかというテーマを理論と実践の双方から検討しようというシリーズです。
確かに、この問題。格差・貧困が世界的なイシューとなっている中では重要なテーマです。この点を、クレイマーは、まずCI内部での公平性とプロジェクト自体が実現しようという公平性という2つのレベルから論じていきます。
第一のCI内部での公平性というのは、たとえば組織内に多様な人種を取り込んで白人主導にしないというダイバーシティへの配慮が考えられますし、もちろんプロジェクト形成過程における参加の確保という点も重要です。
第二のプロジェクトが実現しようという公平性は、CIプロジェクトに参加する団体間の公平性をいかに確保するのかの検討から、志向するインパクト基準そのものが、少数者を排除していないかを検証するプロセスをいかにCIプロセスに組み込むか、という点まで、多岐にわたります。
私は当初、CIと言う考え方は、コミュニティ・レベルでの問題解決におけるマルチ・ステークホルダー・アプローチを定式化しようという試みだと理解していました。しかし、こうやってCIの発展を見ていくと、CIは、グローバルに進展している格差・貧困の拡大や少数者排除の問題を解決する上での、ログフレーム、組織枠組みや評価枠組みを提供し、さらにグローバルなネットワーク形成を通じて、大きな運動論へと展開していくのではという予感を感じさせるものになってきたような気がします。実際、CIは新たにアスペン研究所と組んで、「コミュニティ問題解決に向けたアスペン・フォーラム」を立ち上げました。
CIというコンセプト、一過性のものではなく、これからまだまだ進化していきそうです。