メトリックス 3.0

先日紹介した「データ志向」を巡る議論との関連で、2014年のスタンフォード・ソーシャル・イノベーション・レビューの記事を紹介しておきます。タイトルは、「メトリックス 3.0:メトリックスの共有に向けた新たなビジョン」です。この記事、メトリックス偏重を巡る議論のブレイクスルーの可能性を示していて非常に面白いです。

記事は、個別の団体がメトリックスを開発する「メトリックス 1.0」の段階、このメトリックスを標準化しようとする「メトリックス 2.0」の段階を経て、今後は、こうしたメトリックスを評価や事業戦略により統合的に活用しようという「メトリックス 3.0」の段階へと進化させていくべきだと主張します。

言い換えれば、「メトリックス 1.0」がアカウンタビリティの強化を、「メトリックス 2.0」がインパクト測定の標準化を目指していたとすれば、「メトリックス 3.0」はこれらを活用した価値の創造を目指す、と要約することが出来るでしょう。

実際、IRISの登場により、インパクトを測定するメトリックスの標準化は進行しつつあります。ただ、それが単なる投資家への説明責任や助成事業の正当化だけにつながっていては意味がありません。この記事は、メトリックス偏重主義を批判しつつ、ただそれを否定するのではなく、よりポジティブにこれを活用しようと提案している点がユニークだと思います。

記事は、「メトリックス 3.0」への方向性として、個々の団体の事業評価→評価結果の他団体との共有→評価結果の戦略的活用→セクターにおける評価結果の共有を通じた集合的インパクトの拡大、という道筋を描きます。その例として、たとえば、「インパクトWiki」という試みや、グラミン財団が開発を進める「貧困からの脱却指標」などを紹介しています。記事では言及されていませんが、FSGのShared Measurementの試みなども、将来的には視野に入ってくるでしょう。分野は違えども、それぞれの試みは、データの共有を通じてインパクトの最大化を目指している点で共通しています。

近年の「××× 3.0」という提案の数々。流行と言ってしまえばそれまでですが、ここにはソーシャル・セクターにおける「集合的インパクト」「ネットワーク・インパクト」への転換という大きな地殻変動が反映されているような気がします。さて、日本ではこれが今後どのように展開していくでしょうか。

http://ssir.org/articles/entry/metrics_3.0_a_new_vision_for_shared_metrics

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