社会的インパクト投資というと、どうしても先進的なテクノロジーを活用した社会的企業のスケールアップに対する投資をイメージしてしまいます。しかし、本来、「社会的インパクト」というのは、「一定の介入措置を通じてコミュニティに肯定的な変容をもたらす」ことを意味しているわけですから、必ずしもイノベーションの領域に特化する必要はありません。
ニューヨークのバイタル・ヘルスケア・キャピタルが新たに立ち上げた3000万ドルの社会的インパクト・ローン・ファンドは、低所得コミュニティで特別なケアを必要とする層を対象にサービスを提供している医療福祉機関に特化したファンドとして、この分野における社会的インパクト投資の新たな可能性を示唆しています。
バイタル・ヘルスケア・キャピタルのプレス・リリースによると、ファンドが対象とするのは、ニューヨークの低所得コミュニティにおいて、介護が必要な老人、障害者、問題を抱える若者、行動障害を抱える人など、特別な介護を必要とする人たちに医療福祉サービスを提供する診療所やケア施設に限定されます。
言うまでもなく、こういった診療所やケア施設はコストの割に安定的な収入を確保することが困難ですから、金融機関はなかなか資金を提供したがりません。このギャップを埋めて、ファンドは、設備投資資金を中心に、事業資金やつなぎ資金なども含めたローンを行うとのこと。資金は、フォード財団、JPモルガン・チェイス財団、メットライフ、バンク・オブ・アメリカなどが拠出すると言うことです。
プレス・リリースによると、ファンドは今後5年間で1億ドル相当のリボルビング・ローン・ファンドに成長させていく予定とのこと。このファンドからどのようなビジネス・モデルが生まれ、どのようなインパクト投資領域が開拓されるのか、注目されます。