ウォール・ストリート・ジャーナルが、イェール大学のディーン・カーラン教授が新たに立ち上げたImpactMattersという非営利団体を取り上げています。この団体は、企業会計・監査の手法を非営利団体用に改訂し、「インパクト監査」という新たな手法を開発して非営利監査に乗り出したとのこと。
「インパクト監査」は、以下の4つの要素から構成されます。
・透明性
・費用対効果
・他の非営利団体との協働
・「変革理論(Theory of Change)
これらの4つの要素を踏まえて、非営利団体がどのような社会的インパクトをもたらしたかを、監査報告としてまとめて公開しようというのがImpactMattersのプロジェクトです。
すでにパイロットの監査報告が幾つか公開されていますが、この「インパクト監査」、非常に面白いです。たとえば、事業の成果は、きちんと無作為対照試験(RCT)で対象グループとの比較による成果をデータとして提出しています。費用対効果については、プロジェクト経費だけでなく管理的経費などの共通経費も算入していて、より実態に即した単位コストを計算できるようになっています。さらに、フィランソロピー資金を入れることで結果的に既存の他の非営利団体をクラウド・アウトしていないかどうかのチェックも監査に組み込まれています。
こうした点は、ともすれば「良いことをしているんだから」ということでコストを度外視したり、逆に「非営利だから」ということでクオリティや成果をおろそかにしていないかをチェックするのに役立ちます。また、特定の財団と組んだ一握りの非営利組織がマーケットを独占したり、他の団体の活動を妨げたりする恐れがないかもチェック可能となります。
インパクト監査報告書自体も読みやすく、エビデンス・ベースですので、説得力がありました。専門の監査が必要ですから、対象となるのは大手の非営利組織が中心になるでしょうが、これが普及すれば、非営利団体にとっては非常に有力なインパクト報告になると思います。もしかすると、非営利組織の「組織価値」を図る上でのスタンダードになるかもしれません。それはまた、大口の寄附者や社会的投資家にとっても資金提供の際の有力なツールになることも意味しています。
企業監査の導入は20世紀の企業システムを大きく変容させました。同じことが、21世紀に非営利組織やソーシャル・ベンチャーに起きるかどうか、これは要注目です。
http://www.wsj.com/…/a-yale-economist-wants-to-make-you-a-b…