昨年、取り上げることが出来なかった話題の一つです。2015年11月6日に、ホワイトハウスは、成果志向型プログラムの発展に必要な新たなツールについて議論する会議を開催しました。会議には、政府関係者のみならず、NPO、助成財団、インパクト投資家、テクノロジー関係者、研究者も参加し、プログラム設計から、テクノロジーの活用まで、多岐にわたる課題が取り上げられました。
昨年、日本でも大きな話題になった社会的インパクト債ですが、実はこのプログラムが導入される背景には、米国政府が進めているこのような成果志向型プログラムへの転換という大きな流れがあります。政策的には、第一期オバマ政権の公約の一つであった社会革新基金(Social Innovation Fund)や革新投資基金(i3: Investing in Innovation Fund)などの設立が契機となっていた点を忘れてはならないでしょう。また、成果志向型プログラムの背景には、エビデンスを基礎としたインパクト評価システムの開発と省庁を越えた共通化の動きがあることも見逃せません。
今回の会議では、そのような政府の取り組みを評価した上で、さらに将来に向けた様々なイニシアチブが提案されました。たとえば、サンフランシスコ連邦銀行とノンプロフィットファイナンスは、成果志向型プログラムがNPO活動に与える影響についての包括的な調査プロジェクトを立ち上げます。ジョージタウン大学ビーク社会的インパクト&イノベーション・センターは、成果報酬型プログラムの拡大に向けた包括的な研究プロジェクトを立ち上げます。これらは、今後、連邦政府の取り組みのみならず、社会的インパクト投資や戦略的グラント・メイキングにも影響を与えていくことと思われます。
日本でも、「社会的インパクト」が普通に語られるようになってきました。ソーシャル・セクターが社会的インパクトを志向し、行政が客観的なデータに基づいて成果を志向するようになることは歓迎すべきことです。日本社会が、現在抱えている様々な社会的課題を乗り越えていくためには、どうしても必要なプロセスだと言えるでしょう。
ただ、そのためには、様々な評価手法の開発、政府情報の公開と透明性の確保、評価や手法に関する研究体制の確立、インフォーメーション・クリアリングハウスの設立など、エコシステムの整備も必要です。「社会的インパクト」をかけ声だけに終わらせることがないためにも、こうした欧米諸国の動きを常にフォローし、学ぶべきところは学んでいく必要があると思います。
https://www.whitehouse.gov/…/new-momentum-enabling-outcomes…