もう一つ、英国の事例を紹介しておきます。南スタフォードシャー・コミュニティ・エネルギー(SSCE)が、新たにシェアを発行して貧困家庭の支援に乗り出しました。プロジェクトの内容は以下の通りです。
(1)SSCEが地元住民から資金を調達して地元の大学病院にルーフパネルを設置する。
(2)これにより、大学病院はエネルギー経費を節減する。節減経費を使って、SSCEは投資した住民に20年間でIPR4.5%のリターンを支払う。
(3)大学病院は、さらに余った電力を政府プログラムに売却することで収入を得る。収入は、コミュニティ・ファンドに投資される。
(4)コミュニティ・ファンドは、Beat the Coldという「光熱費負担貧困」問題に取り組むNPOに資金を提供する。Beat the Coldは、貧困のために光熱費負担が出来ず、劣悪な住環境の置かれている慢性病患者の光熱費削減を支援する。
(5)この結果、毎年、光熱費が払えずに寒さで亡くなっている400人の患者の命を救い、毎年、風邪で入院する3200名の病気を予防することが出来るようになる。これは、年間230万ポンドの医療費節減につながる。もちろん、市の二酸化炭素排出量削減にもつながる。
社会的投資により、コミュニティ全体の医療費節減と二酸化炭素排出量削減を行うだけでなく、多くの貧困家庭の生活環境を改善するというウィン・ウィンのメカニズムです。しかも、自治体の財政出動は不要。こういう仕組みをどんどん広げていきたいものですね。