社会的企業であれ、コミュニティ・ビジネスであれ、どんなに良いアイディアがあって、どんなにそのアイディアがコミュニティのニーズに応えていても、立ち上げ資金がなければ始まりません。しかし、コミュニティ・ビジネスというと、普通の銀行はなかなか融資に応じてくれませんし、仮に応じたとしても、担保を取られたり、リスクが高いからと言って高い金利を設定されたりしてしまいます。さらに言えば、コミュニティ・ビジネスの場合、ニッチの市場を相手にしているため、ビジネスが軌道に乗るまで時間がかかりますが、こうしたニーズにも普通の融資は対応していません。
こういう問題への一つの解決策として英国で導入されたのがコミュニティ・シェアズです。もちろん「Share」には「共有する」という意味と「株式」という意味の二つが込められています。これは、英国コミュニティ&地方政府省が支援し、Co-operative UKが運営しているウェブサイトです。資金調達をしたいと考える社会的企業やコミュニティ・ビジネスは、このウェブサイトに登録し、一定の審査を経た上で、ウェブサイト上に公開されます。コミュニティの住民は、自分のコミュニティに関わりがあり、かつ自分が関心を持っている分野のビジネスをこのウェブサイト上で探して少額投資をするというシステムです。
これは、クラウド・ファンディングの一形態ですが、政府が支援し、Co-Operative UKのような全国的組織がスクリーニングを行っている点では、社会的証券取引のようなシステムに近いものだと言えるでしょう。コミュニティの住民も、自分のコミュニティに関わりがあれば関心を持ちますし、またスクリーニングを経ているので安心して投資することが出来ます。
日本でも、コミュニティ・ビジネスや社会的企業の資金調達をどうするかは重要な課題です。でも、すべてを市場に任せたり、金融機関に任せたりするのではなく、政府がインフラを整備して地域内で資金が循環するシステムを作るというコミュニティ・シェアズのような方法ももっと検討されて良いと思います。