この情報ボックスの主なテーマの一つは、社会的インパクト投資や社会的インパクト債など、スケールやインパクトを志向するソーシャル・セクター団体をターゲットとしたソーシャル・ファイナンスの最新動向を紹介することです。この情報ボックスを開始したのは、私が2012年にジョンズ・ホプキンス大学市民社会研究所で客員研究員として滞在している際、海外で急速に拡大しつつある新たな手法をぜひ日本の方々に広く知っていただきたいと考えたからです。
このたび、その全貌を明らかにしたレスター・サラモン教授(ジョンズ・ホプキンス大学市民社会研究所長)の新著をようやく翻訳・刊行することができましたのでお知らせします。タイトルは、「フィランソロピーのニュー・フロンティア:社会的インパクト投資の新たな手法と課題」(ミネルヴァ書房)です。まさに私がこの情報ボックスを立ち上げるきっかけとなった研究プロジェクトの成果であり、現時点で日本語で入手できる最良の入門書になると思います。
本書が紹介しているのは、「社会的インパクト投資」や「社会的インパクト債」などの新たな資金提供手法です。それだけでなく、コミュニティ開発における「証券化」手法や、社会的企業を対象とした「社会的証券取引所」、非営利団体向けの債券や信用補完、「社会的責任投資・購入」、助成財団の共同ファンディングや個人のギビング・サークルなど多岐にわたるツールやアクターも包括的に紹介しています。
さらに、本書は、このような新たなソーシャル・ファイナンス手法が発展することの背景や、これがソーシャル・セクターに与える肯定面/否定面双方での影響、今後のマーケット発展のための政策課題などを総合的に論じています。用語解説や索引も充実しており、実務者から研究者、あるいは政府関係者の方々などにも役に立つ情報と分析が満載の一冊となっています。
また、訳者としても、本書のNPO研究における位置づけや、日本における社会的投資の最新状況などを解題として加えました。これにより、海外だけでなく、日本の現状も知っていただけるようになっていますし、本書が刊行された2014年以降の動向も出来るだけフォローできるようにいたしました。
訳者として、というよりも、むしろ、日本におけるソーシャル・ファイナンスの発展を心から願っている者の1人として、ぜひ多くの方に本書を読んでいただき、日本におけるソーシャル・ファイナンスを巡る議論がより一般化し、かつ深まることを願っております。本書の詳細については、以下のサイトをご覧下さい。サイトから、オンライン書店に飛んで購入できるようになっています。また、皆様からのご意見ご感想もお待ちしております。どうぞよろしくお願い申し上げます。