イノベーション・インパクト」カテゴリーアーカイブ

ユタ州SIB(続報)

先日、ご紹介したユタ州の社会的インパクト債の評価を巡っても、引き続き、米国内では議論が続いています。どういう議論か簡単にご紹介しておきますと、争点となっているのは、ユタ州の社会的インパクト債事業です。幼児教育を通じて特別学校への進学者数を減らせば、それに応じてリターンがあるというプログラムが「1年目で成果を上げ、ゴールドマンサックスなどの投資家にリターンが出た」という記事に対して、専門家から、「成功したという成果は、通常ではあり得ないもので疑わしい」という批判が出ました。これをきっかけに、社会的インパクト債とその手法を巡って議論が続いているのです。 続きを読む

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Lean Dataのさらなる展開

先日お伝えしたアキュメン・ファンドの新たな評価手法Lean Dataについて、スタンフォード・ソーシャル・イノベーション・レビュー(SSIR)が追加で記事を掲載しました。記事からは、ケース・スタディとフィールド・ガイドもダウンロードできるようになっていてお勧めです。 続きを読む

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ザッカーバーグ氏のフィランソロピーモデル(続々編)

ザッカーバーグ氏のフィランソロピーに関するさらなるコメントです.

12月4日に、ザッカーバーグ氏自身のメッセージがポストされました。これによると、「財団を作ったら、その時点で免税になるけれど、財団には制約がある。自分たちにとって最も重要なものは、ベストの仕事を行う組織に資金を提供する柔軟性にある。その組織がどのような法人格を持っているかは関係ない。もちろん、LLCの場合、キャピタルゲインに課税されるけど、自分たちは払うつもりだ。」ということでした。 続きを読む

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Lean Data:アキュメン・ファンドが提案するインパクト評価のオルターナティブ

社会的インパクト投資であれ、社会的インパクト債であれ、発展の鍵を握るのは「社会的インパクト評価」だということは言うまでもありません。SROI、RCT、CBAなど、多様な方法が提案・導入されています。また、IRISやGIIRSなどのツールも開発されています。これらはもちろん、投資資金を獲得するために不可欠なものなのですが、どうも議論の方向性が「まず投資家ありき」なのではないか、という疑問もぬぐえません。 続きを読む

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インパクト・インフラストラクチャーに向けて:CIIXの挑戦

公共事業は、一国の経済・社会の基盤を提供します。水資源の管理、エネルギーの生産・供給、運輸、住居、その他社会・公益インフラは、我々の経済と社会を支える根幹です。従来、これは政府資金(補助金、政策金融)が中心的な役割を果たしてきました。しかし、主要先進諸国において政府財政が逼迫してくるに伴い、政府主導には限界が出てきました。日本でも、新たなインフラ整備はおろか、インフラの維持の費用さえ覚束なくなりつつあります。他方、公益性の高いインフラ事業を完全に民営化することには大きなリスクが伴います。 続きを読む

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低所得者向け医療福祉サービスを対象としたインパクト投資基金

社会的インパクト投資というと、どうしても先進的なテクノロジーを活用した社会的企業のスケールアップに対する投資をイメージしてしまいます。しかし、本来、「社会的インパクト」というのは、「一定の介入措置を通じてコミュニティに肯定的な変容をもたらす」ことを意味しているわけですから、必ずしもイノベーションの領域に特化する必要はありません。 続きを読む

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ENGAGE:ネットワーク時代のファンダー向け情報リソース

ソーシャル・セクターは、ネットワークの時代に突入しつつあります。集合的インパクトやネットワーク・インパクトが日常的に議論され、ネットワーク型のキャパシティ・ビルディングやネットワークの評価手法までが開発されている今日、助成財団や公的機関も、時代の変化にあわせてそのマインド・セットを変える必要があります。 続きを読む

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米国議会で進む「成功報酬債」関連法制化の動き

成功報酬債(PFS: Pay for Success)は、米国版の社会的インパクト債です。ホワイトハウス主導で開始されたこの新たなファンディング・プログラムに対し、議会で法制化の動きが続いています。 続きを読む

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社会的インパクト債構築のための新たなローン・プログラム

社会的インパクト債が成功するための最大のポイントは、効率的にインパクトを達成したという実績が客観的に実証されているプロジェクトを選択すると言うことです。社会的インパクト債は、アイディア段階のプロジェクトに投資するツールではなく、成果が実証済みのプロジェクトをスケールアップするのに投資するツールだからです。 続きを読む

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社会的企業のスケールアップ戦略の現状と課題

社会的企業はビジネス・モデルを使って社会的課題の解決を目指します。営利であれ非営利であれ、ビジネス・モデルを使う以上、経営の安定のためにスケールアップが必要となります。なぜなら、スケールアップを通じてマーケットを拡大し、収入基盤を安定させることによって不足の事態から生じるリスクへの抵抗力が増すからです。

ドイツの財団が欧州主要諸国の社会企業を対象に実施した「欧州における社会的インパクトのスケールアップ調査」報告書は、このスケールアップの現状と課題を実証的に分析していて興味深いです。

調査では、まず、スケールアップ戦略として、以下の4つのカテゴリーを提示します。

1)キャパシティ・ビルディング
→組織の基盤強化

2)戦略的拡大
→新たな製品・サービス、顧客、活動範囲の拡大

3)契約パートナーシップ
→ネットワーク形成、ライセンス化、ソーシャル・フランチャイズ、ジョイント・ベンチャー

4)知識の普及
→模倣、ロビーイング、テクニカル・サポート

日本では、社会的企業のスケールアップ戦略というとまだ組織の基盤強化と戦略的拡大しか議論されていませんが、欧州の場合は、パートナーシップや知識の普及なども視野に入っている点が注目されます。特に、ソーシャル・フランチャイズやライセンス化などの手法は要注目ですね。

その上で、報告書は、それぞれのカテゴリーごとに、成功/失敗要因を分析し、さらに国境を越えたスケールアップの可能性を探っていきます。スケールアップを成功させる組織の要因は何か、逆にスケールアップを阻む内的/外的要因は何か等を、社会的企業へのヒアリングやアンケート調査を通じて検証しているため、説得力がありました。

日本でも、ソーシャル・ビジネスの拡大は政策課題の一つです。新たな法人格や社会的投資などの資金供給、インキュベーション支援なども重要ですが、このように将来のスケールアップも考えることも必要です。この調査のように、具体的な調査による検証を通じた制度設計の議論が求められます。

https://www.bertelsmann-stiftung.de/…/scaling-social-impac…/

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